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定時で上がった。とても久しぶりのような気がした。こんなにも温暖なのに日はもう暮れている。机の上の小ぶりなかぼちゃの色濃いリアリティ、世界の中心ですと言いうるだけの存在の自信。あなただけがくっきりしている。

少しだけ外に出た。仕事終わりの夕方の妙な浮遊感が昨日一昨日の景色と混ざり合い、今ある家並みと解体されていく家の映像が頭の中で混ざる。住んでいた場所が壊れること、計画的に壊されること、壊すつもりで壊されること、壊すこと、それは一体どんな感傷だろう、あまり経験したいとは思えなくて。瓦礫の写真と重なる。小さな生活の跡がなくなる。記憶の中だけが存在を担保できる場として機能するとき、それは宙に浮いていた方が良いような気がする(脳が物質である以上それはあまり意外性のあるイメージではない)夏に友達が教えてくれた映画を見た、釈然としない気持ちと何か影響を受ける気持ちを両立させられるようになったらきっと色々なものが大丈夫になっている。釈然としない嘘の中に自分だけの本当を見出すこと、釈然としない距離感をはかってみること、それができるようになれば怖いものはもう少しだけなくなっていくのかもしれず、そうであるなら時間の経過は何か(ポジティブな印象の言葉)であると言える。