0215

ひさしぶりの雨だった。春みたいな雨だった。

逃れ得ない気怠さの中に透明な音がちらばって、とてもなつかしいような気がした 空っぽな部分に延々と降り注いでくれているみたいな気分になるから雨の音を聞いているのが好きだってことなんて今思いついただけ でも雨の音も匂いも割と前から好きだった だけれど空気には湿度があって、それはつまり重さがあるということで、重さがあるものは実感してしまうので、わたしは春の訪れと同じようにきょうの気候を恐れていた

雨上がりの夕方が珍しいような気がして、浴室の窓から、周りにそびえる大きな影の隙間にのぞくあおい夕空を遠くに見た ここのわたしでなければきっとすぐに外に出かけて、無為に歩いていただろうな と思う ここのわたしはそんなことしない それはただ惰性に守られてきた自己像に過ぎない

卒論を同学部の他専門の人たちに聞いてもらうというイベントがあり、人の関心ごとを聞くのはいつでも楽しいということを思い出して久しぶりに何かが生き返ったような気分。どうしても伝わらないことがあって、それはわたしの言葉と理解の拙さ以外にも理由があるような気がして、それはおそらく何が悪いでもないけれどわたしは、これからさきになっても曖昧で掴めないものを絶対に大事にしたいと思った