1004

「日記をさ、書くんだよね」「何を書けばいいと思う?」「どうだろう。今日は頭がとても痛かった」「南の部屋は眩しいくらいの晴れの日で、とても10月とは思えない生温さに冷房をつけながら仕事をしていた、嵐の前の静けさのように、今日も定時で上がった」その頃には窓の外はもう暗くなり始めている。(どちらかといえば嘘みたいだった)(風が強い日だった)(窓際の籠が飛んで行った)

書いてあることと、声になることは違うこと、秋の虫涼やかに鳴いている、木々、長い長い枝の揺れの音を知って育つことができたことに感謝しながら頭痛のやまない昼の声。食事に支障が出るほどに頭が痛い、痛い。退勤してから少し寝た。呆然とした思考のままだった、読みたい本と見たい映像を少しずつ進めて、覚えたい言葉を眺め、声は出さず、窓の外に虫の声、その隙間にぱりぱりと夏が砕ける音を聞く。(彼女の名前はアナグラムだったんだと唐突に気づいた)