0616

両手から知らない人のにおいがする。

 

スーツを着て外に出る。あんなことやこんなことがあってかれこれ2ヶ月ぶりくらいに、私鉄の通る駅を目指す。もうコートなんてとんでもない、日差しはすっかり夏への憧れみたいに形を持って、分厚いスーツとマスクを巻きつけてその下を歩けば1分も経たないうちにくらくらした気分になる。こちらも久しぶりのコンタクトレンズが目に馴染み切らずに視界がたまに濁ったりして、ぼんやりとした判断力で、拡散されるきらきらした視界を見渡してまるで綺麗な悪夢を見ているみたいに暑い。とにかく暑い。やっとな気持ちで駅にたどり着いて、すぐ近くのコンビニで証明書を刷る。ついでに炭酸の小瓶を買う。ホームに上がったところで腕時計を忘れたことに気づいてけれど戻るには時間も気力も残されていなかった。久しぶりに飲むと炭酸が妙に勢いづいて涙目、何度だって飲んだはずなのに不気味なくらい甘くて、

たかが学生劇団の音響班出身が粋がっているみたいであまり大きくは言えないけれど、やはり移動と音楽は相性がいいと思う。視界の要素という要素が次々に移り変わって、体じしんもいろいろな強度で揺れて、そうなってくるとどうしたって音楽とぴったりのタイミングで何かが起こるからだ。全てがきっかけ。ちなみに映像の方が視点の切り替わりがあるぶん音のきっかけになる箇所は多く見つけることができるとか。とかと言いつつ納得している。3つ上の先輩が雑談交じりに話していたこと。全ての音をコントロールするという意味では別の苦労があるのだろうけれど。そんなことを考えながら、曲の盛り上がるところで地上に出たときの感動。

ここ数日、微妙に変な匂いが部屋からするなあと思い、気を使って呼吸をするのにも疲れてきたので原因を探していたら引き出しの中で古い乾電池が破裂していた。結局引き出しごと外して、異臭自体は慣れてしまったせいかどうなったかもわからない。

 

コンタクトついでに、去年の今頃よくきいていた曲。行き先が決まるまでは怖くて聞けない。毎週のように乗った夜行バス、まだ慣れない他学部棟、じめっとした空気と得体の知れない何かへの不安とカフェインが連れてくる安心、それから週に2回会えた人たち、0616