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何を書きますか?何を書こう。昼前に起きて、支度をして電車に乗った。化粧がうまくいった気がする日は鏡の前を去るまで普通に嬉しい(すぐに忘れてしまうけど)。乗り換えのために歩いていると、柔らかな色味の花が酒瓶に挿さって道端に佇んでいた。また初めて乗る電車に乗って、揺られながら作業をしていると作業のために移動をしているような気持ちがして良し悪しはともかく幾分合理的だった。顔を上げると桜が咲いている。知らない路線のはずなのに、懐かしい景色と重なってまた過去に引き摺られている意識を情けなく思う。用事はつつがなくすんで、人のまばらな駅前で急に食べたくなったのでコンビニのおにぎりと、ひと粒と思えばそれなりの値段だよなと思いながら梅干しを食べて帰りの電車に乗った。冬の希薄は少しずつ遠くなって春のとろみ、人混みの中に出るたび地面にうずくまり渦巻きになりたいと思う、いつも思う。帰り道で酒瓶は転んでいて、花は踏みつけられているのを見つけたときの、気持ちを、これを言葉にしなければならないと思うのに。人の多い道でお気をつけてとそちらこその間を通り抜けながら、今こそ私は川に近いと思うのにちっとも嬉しく思えないこと。

After Loss - 北航平