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朝遅く起きて明るい時間、ひとりの家で渡しそびれたレトルトのカレーは微妙な味がした。電車に乗って都心へすべり、やっぱりコートは買えない。頭を上向ければ秋から冬にかけての淡いきれいが昼から夜へと階調を連なって、空の色からきれいという気持ちがはじまったのではないかみたいな嘘を思う。靴下を買って歩く足の裏、膝の裏は意識されないまま夜になる。相槌、打つタイミングをはかるのが元通りに苦手になっている。機会があり、人と少し話したけれどうまく流れを汲めなくて、ようやく得たものはさらさらとこぼれ落ちて行くのだと、そういう性質のものなのだと思えば虚しく、それでも気は少し軽やかになるのはあまりにも敬意が足りていないじゃないか。日々のゆるやかに窒息していくような感覚に蓋をして、あるいは目を背けて麻痺させて、なんとか滑り降りて行くこと。雨が降っていたような気がする。