0604

一年のうちにいくつもぶら下がっている木曜日のうちのひとつをちぎり取って、みんな木曜日を暮らしている。今日までにいくつの木曜日が消費されましたか。統計情報統計情報、日焼け止めは、真面目に塗っていると安物でも非常にコスパが悪い。窓の外から、声変わりしない男の子たちのはしゃぐ声が聞こえる。最初はグー、じゃんけんぽん。あいこでしょあいこでしょ。歓声。笑い声。落ち込みの広がりを見つけるたびに、精油の瓶を開けて息を吸い込む、どうにも正しくない感じになんだか安心の気分になる。そういえば、精油を買いに行ったとき、いわゆる安眠系のものがほとんど売り切れていたこと。


喋ることが決まっても上手く喋れないから、みんな練習をするのだな。何もかもができていなかったということ、分解さえできてしまえば一般論に戻っていける。辿り着けなかったのは私だが、何もかも怠惰が故なのだと、私と、私に想定される世間は断定する。体が鉛のように重たくなっていく久しぶりの感覚、足先だけが冷えていく少し懐かしい感覚。夕方まで動けないで眠っていた。起きても、作業・本・音楽・動画のどれにも耐えられない怠さ。

食事、用意してくれたものを断ることの失礼と、用意してもらって食事を取る無礼とが天秤の上に並べられる気分。何も食べたくない、食べていいと思えない、残り物であれば食べても良い気になれる、話し声が怖い、笑い声が怖い、物音、気配が怖い。家出をすることを夢想する、こんな時勢でもなければ、平日の一番安い夜行バスに乗って、春の際まで住んでいたまちまで流れて行きたかった。家族が寝てからでは間に合わないから、黙って外に出ることになるだろう、広過ぎず狭過ぎない川の流れがいまとても恋しかった。生ぬるい水滴がぼとりとあぐらをかいた足の裏に落ちて、気持ち悪かった。気持ち悪くて一方で、そこを起点に質量のことを思い出せたり、など。心臓、脈打つことを強いられている。きのうに予定していたきょうは訪れなかった。きょうもまた、迎えることのない明日のことを考える。

 


昼寝の夢

狭くて木造の廊下。閉じられた扉の外からでもわかる、ぎゅうぎゅう詰めの部屋。何が入っているのだろう。薄暗い階段。資料を探して歩いている。狭い建物を登る。青緑灰色。屋上に駐車場があって、日の沈みきって真っ青な時間、車に乗る。思い出だったかもしれない。今はもうその建物が存在しないことを知っていたような気がする。起きてみれば、昔にだってそんな場所はなかったのだった。