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大切なものを打ち砕くのはいつも言葉の粗さであって、大切なものを守るために間に合わせの殻を言葉で作る、守られるものはいつも柔らかく、輪郭を持たず、だから人には説明できず、可視のものとして提示できず、私にとってはずっとそれでよかったのに、誰かがそれを無自覚に壊そうとするとき、打ち勝ち逃げ切るためには言葉の堅さが必要になってしまう。嫌いではないが、利用したいものではない。一番の策は、そうした危険に近づかないこと、遠ざかること、誰もいない場所へと逃げていくこと。右耳の耳鳴りがするたびに懐かしく、どこかへ帰っていける気持ちになる。穏やかすぎる食卓はいつも少しだけ不安で、