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朝の電車、深く息を吸って、吐く、それは何でもないことなのだから、大事なことではないのだから、そう言って、体の中心に埋まっている、かたくて不要な骨が揺らいでいるのがわかる。いつもこの隙を突こうと苦心してきた。片耳の緩衝材がはずれたイヤホン、半分の音楽をたよりに輪郭を少しずつ空間に溶かしてみる。

連日の朝の早さに対してうまく寝付けていないので寝不足で、薄暗い幕の裏で時間を待ちながらうつらうつらとしていると、ふと耳元で知らない男の声が「寒い」と呟くので目が覚める、ような、おそらくは聴覚の、認識の勘違いを敢えて摘み上げてみたら少しは愉快になるだろうかと日々を過ごしている。朝起きたらとても冷えた、私だけではないけれど、寝るための部屋は特によく冷える、冬だ、季節は生まれ変わらないまま滑り流れて冬が来る。

今度に課していたものはひとつとして達せられずに悔しい思い、価値がない、何もない、意味のないものはここにおいて害でしかない。明日こそはと思ってみる、人は等しく老いていくからもう時間がない。読んだのは銀河鉄道の夜・赤いガラスの宮殿・青い星の国へ・青い花の香り・死後・沙羅の花、貝殻は途中まで。