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感じてみたかった。圧倒的な冷静さと大きな感情の間で全身を知覚し自在に動かしてみたかった。結局眉間の箱から意識は出られなかった。日常の機微と呼ぶには粗末なぶれと、些細な快と不快以外、放出できるだけの感情を生み出すことができるはずがなかった。ならばせめて、客に愛されるような演者でなければならないのだとずっと思ってきたけれどそれすらもできずに、自意識はどうしても醜く露呈されてしまうし表情も思うように動かないのに目だけは泳いで声もたいして出ないまま、要するに不適格を克服できないままであったこと、それだけが私にとっては結果だった。何かを思っても感じても、力がなければ説得力を持つわけがなく、結局最後には腕力が必要なのだと痛感する。不適格で無能のくせに、中途半端に賢しらになってしまったために余計にたちが悪い。

京都に行かなければいけなかった理由をまたひとつ拾い上げる。集団の輪に強いて混ざらないでいることを積極的に選べるようになったのは、時間が経ったからでも成長をしたからでもなく、自分が居られるコミュニティがこの世にあることを知ったからなのだと思う。帰りの電車、わずかに上の開かれた窓がやけにがたがたと鳴っていて音楽みたいだと思った。