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歯を磨こうとしたら、どういうわけか妙に甘い匂い、花のような?作り物の花のような、とでもいうのだろうか、そんな匂いが口の中に広がって、いくつかの連想が結ばれる、引く糸が花の形を描くのをぼんやりと眺めている。

 

さて初日だった。合間の休憩にぶつぶつ言いながら関係のない言葉をいじるのがいやに悔しくて続けてしまう。起こってしまうこと知ってしまうこと、動揺、焦燥、不安が走り出すから耳に馴染んだ文体をひさしぶりに口に含んですこしだけ安心する。こんなにも緊張するものかと不思議だった、いままでどうしていたかと思い返しながらひとつづつ照らし合わせて何がどう作用するのかを考える、それすら詮無いこととわかっている。終わってから口ずさむ歌に愕然することもできる、ひとりで歩ける、久しぶりに、覆いかぶさる疲労の姿を見つけた気がした、そういう状態になるのはいつ以来だろうと思った。反省することはいくらでもあって、いつまでも追いつけない絶対に届かない場所のことをぼんやりと考える。具体策がひとつでも思いつくようになっただけでも進歩と言えて、それはもうみんながとっくに乗り越えるでもなく勝ち得てきたものなのだと知っていて。