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正午のあたりで妙に意識が暗く、頭が重く痛くなったのはなんだったのだろう。いつの間にか綺麗にいなくなっていた。これからずっと、つまらない夢にすがって生きていくような気がするけれど、多分それで良いのだと思ったりもするから、わたしはなるべく正気から離れていたい。

今日こそとふたたび図書館へ。帰り道、子どもを自転車の後ろに乗せて緩やかに走り去る女性とすれ違う。穏やかな鼻歌が、陽光を浴びて光っていた。

借りてきた本の方からか、腐敗した人間のようなにおいが一瞬鼻もとを揺らいだ気がした。腐敗した人間という言い方であっているのかはわからない。より経験に基づいていうならば、小学生の頃、何日か風呂に入っていないと豪語していた、友人とも言い難い距離感の人間のにおい。わたしはその時そのことでその人を嫌っていたが、それは正しかったのだろうか。そう思って良かったのだろうか。

鼻奥の粘膜を、甘い気配が焼いた気がした。形のないものの気配が、後ろの壁のすぐ向こうまで来ている気がした。食事中に一瞬、心当たりのない妙に強い香りに喉を覆われた気がした。気がした、気がしてばかり、本当は何も起こらない、髪の毛がほんの少し伸びるだけ。こうして並べてみるとなんだか安っぽい物々しさがあるように思えて笑える。急に頭に出てくる音の並びを捕まえてパソコンの中に落とす、そうしたこともすぐに忘れるだろうに、これがなんの曲だったのか、いつか思い出せたりするのだろうか。