1117

昨夜寝る前。半日聴き通していた短い曲と、寝る直前に聴いた曲が不思議と調和して思考の淵を揺らしていた。どちらも初めて知って好きになった曲だった。試しに、久しぶりに意識を広げてみようと思い立つ。鼻奥から体へ、布団へ、ベッドの淵へ、そこから部屋の壁へ、としようとしたところで意識が止まる。そこまではいけない、回復途上なのかもしれないし、単に鈍ってしまったのかもしれない。全ては想像の中での話であって、生活する上で何か困ることがあるわけでもない。けれど。

起きる。今日は比較的適正な時間に目を覚ますことができたと思う。今日は外に出た。よく晴れていて空気は柔らかく、なぜか草の匂いがした。幼稚園帰りとみられる親子が落ち葉を拾って遊んでいる。この間想像の中で一帯をつんざいた色鮮やかな破片は、その透明を柔らかさと引き換えて、正しく降り積もって小さい手の中に収まる。よく晴れていた。図書館で本を返して本を借り、コンビニで遠隔複写の料金を払う。帰り道、小学校から聞こえるチャイムの音が懐かしいのかどうかももうわからない。ずっと昔のことになってしまう。

それ以外の時間は提出用に諸々をまとめようとしていたり、それからひと月ぶりに相談室の面談があった。開き直っても怖いものは怖い。

明日の諸用のために爪の色を落とさなければならず、ティッシュを引き抜いて除光液を垂らすとつんとしたどこか甘さのある香りが妙に鋭く鼻を刺した。うっかり癖になってしまえばとんでもないことになるような気がした。窓を開けて、揮発したそれがなるべく吸気に入らないように少し指先を遠ざけながら、色を落とす。だいたいの色素はティッシュに吸い込まれてくれたのだが、左手の小指、一本だけはじめに青を乗せた爪だけがまだ青みがかったままでいる。諸用はオンラインではあるからきっと映りはしない。明日起きて気になったらまた試してみたら良い。後悔は後悔としてじりじりと肋骨を焼く、事実においてはやり直させてもらえることのほうがきっと圧倒的に少ない。