0911

実家は異郷だ、久しく目にしていないメロンのような香りがして午後になる 鍵の鳴る音がする、夜は金属を擦るような、快すれすれの虫の声が聞こえる季節になった カメラロールがひっくり返ると大学に入りたての頃だから4年以上前に、ひとり宛てなく新歓を巡っていた時期の写真、能面をかぶって座っている私。中にいるのは本当に私か。外から空気の音が聞こえる、時間が流れている音なのではないだろうかと思わないでもなく、うまく開けられなかったボール紙がまだらに透けている

大学の図書館から郵送してもらった本が届く。親のいないときになるインターホンに身構える仕草は習性として抜けていないけれど、思えば私は成人女性である、さほど怪しくなければ私が応対して怒られることもないはずであるの確信によって受け取る郵便物。久しぶりの記名。べりりと剥がす。

皮膚科に薬を取りに行く。図書館に予約の本を取りに行く。

祈られるのにはとっくに慣れていたはずなのに祈るのにはかなりの負担があるだなんて思ってもいなかった。これでふたつ目で、あとひとつあるかないかで終わるだろうと思う。長かった。