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どのようにしてなら立てるのか、どのようにしてなら発音が可能なのか、を考え始めてから、意識がそちらに振れるたび物の輪郭がくっきりとしすぎている、電車にいて、揺れていて、場所があって、音がして、不思議じゃないのに、ずっと知っているのに、今までと何も違わないのに、少しずつ、人間になっているような気がする(人間が何なのかわからないのに、はじめから人間になっているはずなのに)

肌寒そうな空気の色に反して湿り気に熱は溜まり、青いワンピースでお昼過ぎに出かける。ひさしぶりによく眠れた、わけではなくても、長いこと布団の上で呆然としていた。

川に向かって歩く、穏やかにたたえられた水がたぷたぷと光る。左右に飛行機。課題の話、動きの話、帰省の話、時間の話を聞く。

舞台を見る。目の前の光景を、見たいものを見るための道具にしないための緊張。挨拶。人と出会う。聞こえたり聞こえなかったり。思考の懐。いろいろなことを教えてもらった、みんな不思議なくらいに親切で少し身構える。こんなにもたくさんのことを考えて知り、動いている人たち。