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とは言ったものの、本を読んでいるうちに眠くなって寝た。後ろめたさに電気を消すのではない眠り方はなんだか久しぶりのように思えた。読んでいる本は、私が好きだと思っていた話題、そんなに好きじゃないんだろうなと思った話題、でも読んでみたら相対的にはやっぱり好きな話題だったなと思う。私に取っては大切。食べ物としてのパンは好きな部類だけれど、美容院に行った時、話の流れでパンが好きですと口にしたら色々なお店の名前を出されて、でもそういう好きじゃなかったから、別に詳しくなくて、だからお店とかも知らないことを伝えたら失笑されたのが腑に落ちない。前に住んでいた場所は徒歩十五分圏内にいくつかパン屋さんがあったこと。仕事はまた思わぬ方面へ曲がり、私一人だけ楽しげな作業に時間を費やしている。いいのだろうか、いいのだろう。幸運だと思えばいいのだろう。

私がなりたくてもなれなかったもの、みたくても自分の目では見ることができなかったもの、辿り着けなかった場所、それらみんなの架空の手触りを追いながら、でもだって、完成形を外気の形に求めていたのだから、届くはずがなかった。卑しさには気がついていた。その輪郭を少しずつ鮮明にして、どうしようもなさを知っていくことを大人と呼ぶのなら。