0627

細い月と金星

ずっと頭が朦朧としている 小さい吐き気を冷たい水で流し込む

売店のイートインスペースに逃げ込んでよくわからないまま買ったパンを食べた 休憩時間なんてとってはいけないのではないか、悠々と食事なんかしていてはいけないのではないか、窒息しそうだ 今月の時間外労働が70時間を超えた先輩から今月の時間外労働が50時間を超えそうな私に作業が受け渡されて これでも私には十二分の環境だから、ほかに行くところはない

ずっと頭が朦朧としている

帰る頃にはもうだいぶオフィスに人の影はなく、さりとて最後というわけでもないことに小汚く安堵して、電車、多分同業の同期くらいの女の子がきちんと参考書を読んでいる 横でわたしはきっと読みきれない文芸誌を開いた ページが反対側に捲れる隙間は世界の隙間 この場合、反対向きに歩いているのは私だろうな 反対側に時間を あっちが前だとずっと思っているな ずっと ずっと頭が朦朧としている ペットボトルが三本も空になるなら水を汲むことをなぜ思い出せなかったのか ずっと朦朧としている ずっと頭が ずっと