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どうして電車に乗るのだろう。腹から下が震えることが、私が移動している証拠なのらしかった。このあたりには長い時間住んでいたことにはなっているけれど、名前も知らない路線があるようなことに今更気がつく。車窓から見えるのは妙に地に足のついた生活の風景で、冬至を過ぎたとはいえ2時を過ぎれば傾き始める日差しにきらめかされて散らばっている個々の景色があることが、なんだかとても悲しいことのように思った。次の改札を探すまでの道のりは、当てずっぽうとわずかな推測で道を渡って階段を登って、まるで冒険みたいだった。木漏れ日は夏の季語だと思い込んでいたことを初めて知る、滲むまばらな光はいつでも綺麗だ。知らない改札は、去年見た映画で主人公の女性が途方にくれていた景色に少しだけ似ているような気がした。何かを考えている人が考えていることを聞くことは面白くて、これが寂しさに変わるとやがて憎しみになるから気をつけようと思った。子どもからも大人からも締め出された気分だった4年以上も前の日を克服すべく支払った金額が適切だったかどうかわからないのだけれど、小さい空間の中でなぜだか泣きたいような気分でいた、誰かであればこえなければいけなかった葛藤に出くわさずに済んだ代わりだ、鏡の前に立っても自分の顔は見ない。