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寝酒に失敗した、と思った。とりあえずの入眠は早めることができるし、眠りが浅まる分朝も起きやすいと思ったのでそうしたのだけれど、どうやら裏目に出たらしかった。脳の底面のあたりが淀んでいるような感覚はどうやら久しぶりな気がして、駅のホーム、真っ白い午前の陽光が少しずつ強さを増していく下で、コーヒーを買いたいなと思う。乗換案内を見誤って少し早く着いてしまったから、珍しく地上のホームに着いた車両を降りて、適当に座れるところを探して本を開いた。最近、順序立てて話せば支離滅裂になってしまうような出会いにすら満たない出会いがあって、その延長線上に私の知らなかった本があり、それを少しずつ読んでいる最中。少し読み進め、適当に切り上げて改札をでる、周辺の売店でちょうど良いサイズと形状のコーヒーを探すものの見つからなくて諦めて集合場所へ向かう。都心は唖然とするほど大きな建物がぎゅうぎゅうに詰まっていて、人間がただの物質でしかないこと、この巨大な存在の維持のための養分でしかないということを、まるで初めからそうだったみたいに、自明のものとして教えられている気分になる。ものすごい数の鳩が飛び立つのが見えた。看板が、店名が宣伝がうるさい。うるさいと思えるままで良い。目的地の前にあった自動販売機でようやくお目当てのサイズ形状をしたコーヒーを見つけて買うと、生まれて初めてあたりが出た。一緒にいた人たちに教えられて何がなんだかわからないままもう一度違う飲み物のボタンを押すと、本当に取り出し口に落ちてくる。こんなことで運を使いたくなかったと笑ったけれど、嬉しかったです神様。

いつもより少し早い帰路、夕日は薄い雲を裂いて迂闊な虹彩を焼こうとする。稽古に行くたび必要以上にはしゃいでしまうから、帰ってからものすごくぐったりとしてしまう。エネルギーの分配を器用にやりくりできたらもう少しいろいろないろいろがうまいこといくような気がする。うまく行くことと行かないことが半々くらいであって、昔よりもできないことに悲観しなくなったと思う。ひとつでも多くのことが間に合えばいいと思う。少し情緒が落ち着きなくて、つまりこれが過ぎ去った後、無自覚に悲観的になる日のことを予想して身構えてみたりもする。