0720

悪い夢を見た。実際に今日あった大事な面接を控えている最中、なんらかの用事があって避難所に行くと思ったよりも時間がはやく過ぎてしまう。自室か何かが白くて細長い塔のようなアパートの最上階にあって、そこで履歴書が未完成なことに気づく。顔写真はどこにあったっけ。大慌てで、そもそも面接の場所もわからないで、どうしようと焦っているうちに時間を過ぎてしまう。やるせなさでいっぱいになった頭がはちきれるようにして目が覚めた。今日の面接には履歴書を持っていく必要がないと思い出してようやく、夢だと認識する。

 


舞台に立ったことのある人たちにとって、台詞を覚えていない状態で舞台の上に立たなければならないという夢を見ることがある種の共通体験としてあるらしいのだが、それを私は見たことがない。もしかしたら一度くらいあるのかもしれないが、覚えていない。一度も見ないということは、大した思い入れもなく大して努力もせずに舞台に立っていたことの証左のように思えて、なんとなくずっと負い目だ。

 


蒸し暑い一日、冷房を入れれば部屋の開くところすべてを開けなければいけない都合から、涼しさを取るかプライバシーを取るかの二択を迫られる。まだプライバシーを取ることができる。スーツを着る。首まで詰まるシャツをここにきてはじめて着たが、想像していた息苦しさはなく、不思議なまでのしっくり感に私の首を中心とした体が迎えられたこと、しっくりくるとそれだけが嬉しいのはどうしてだろう。道は暑い、暑い道を歩く。駅のお手洗いで、同じ目的地の女の子に出会う。少し話した。点呼のとき一瞬聞こえたその名前は、意識が掴むことも間に合わないで換気扇の中に消えていった。透明の板、アクリルの鈍い輝きをよく覚えている。悲しくなるから考えるのをやめる。

 


不完全言語。ながーいあいだ耳に流し込むカラーノイズを手元のボタンでぷちりと切れさす瞬間からの沈黙 の ような、みみ鳴り、、、、換気扇、、、、、、意識しないと空間を意識することができない生活をそのことを意識するようになってからも何年もやってきて、この世に、誰の意識も照らさない空間があるのだろうかという疑問。私のように視野の狭いというよりも無いに近い人もいるだろうが、そのぶん圧倒的に人並みはずれた強度の視野を持っている人間がいることを私はなんとなく知っているから、案外死角って、難しいと思うのだ。ニワリリ、歩く街、いのちはひとつ。