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昼間は日が翳って、不思議な気分になった しばらく経てばすぐに光は走り出すことを思い出す。あかるさは部屋の窓をさざなみとしてうち叩いて、年の暮れにも色はある。外に出ようと思った。手元のインスタントカメラはとっくに使い切っていたから写真は撮れないことに気づいたけれど、外に出ようと思った。適当に着込んだ体をさらに黒いダウンで包んで、外に出る、冷たさが凛と張って、ああ冬だと思える階段を滑り降りる。4時ごろ、日はすでに沈みつつあり、私は横断歩道の方まで歩いていく。のぼれば空の下、流れていく車がいつまでもいつまでも途切れないでいて、そのどれにも人間が乗っているらしい。空気の青は冬に綺麗。空は曖昧に溶けていく。小声で歌おうとしたけれど、しばらく会話すらまともにしていないのだから当たり前にもう声は途切れてしまう。歌えない喉を持ち帰る。帰省とか、旅行とかしているのか、家でのんびりしているのか、青に浮かび上がっていく暮れの路地には人の気がなくて、スキップをしてみようと思った。運動が苦手な私だったけれどスキップはそんなに困らないでできたのがそれこそ20年くらい前のことで、今の私もスキップはできた、できたけれど、いつ足が絡まって転んでしまうか不安だった、不安だったのにポケットには手を入れたまま、誰もいない路地をスキップして息があがる。体中に脈が走っていることを思い出す。家に帰る、日が暮れる。蕎麦を食べる。家庭は不思議なくらいに穏やかで、嘘はないのだろうと思うからいつまでも続くようなこともないので、それでいつだって不安になるのを黙ってやり過ごしている。穏やかで、幸せな食卓を少し遠くから見てしまう。

今年の抱負は「死なない」だったから、あと3時間弱生きていられたら達成することになる。良い年だったと思う。