0330

この数日、やけにあたたかい。服に困る。ブラウスが乾かない。濃い湿度は春の匂い、寂しい。あちこちで咲く花が無節操に溶け込んでどろりとした甘さじみた匂いが、窓を開ければ容赦無く肺を浸して息苦しい。胸が詰まって恐ろしい。春。こんなにも空気が濃いのに体は軽い、春。

揺れる日光窓枠に照らされてやっと、爪の塗り忘れに気づく。各駅停車を慣れた駅で降りて、地上へ向かうエスカレーターの蹴込み部分が天井から差し込む光に当てられて、ローディング画面みたいにとたとたと光る。気づいてから気づくまでに、深呼吸をするようにしている。

髪を切った。ばっさり切った。感慨は特になかった。蟻の行列を見るような気持ちで、切り落とされた長い毛束が片付けられていくのを見送った。油でべたべたしている髪に慣れないが、これが整えられているということらしい。それから、