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路面電車。枯れた植物が線路の脇でゆさゆさと揺れていて不気味だと思った 濃いマゼンタの花が枯れかけているのが見えてよく見てみたいと思った瞬間に逆向きにやってくる車両に奪われてしまってそれきり。よく目立つ色のダウンを着た男性がチラシを配っている。福利厚生。ここはあそこだが3秒で失われる。民家、民家民家広告文字だらけ、妙にいい匂いが車内に立ち込めている。ひざし。生ゴミ

芝居を見た。無事に幕があがること、無事に自分が客席に座れること、それらがすべて無事に終わることすべてが当たり前ではないことだから、ただそれだけの事実で気持ちが高ぶってしまう。色々ぐるぐる思うところはあれどちょっと長すぎるのでここには書かない。良いものを見たなと思った。それからどうやら音響スタッフの方が私がもしかしたら初めてみたかもしれないストレートプレイ、10年前の公演でも担当をされていたようで、そのことを知って少し落ち着かない気分、こんなことってあるのだな、色々なことを思う。帰りはバス、冬至は間近、ビルの窓に三日月が反射していた、高くに掲げられた三角コーンと柔らかい冬の日差しを思い出し、動く椅子、黒く腐っていった右手とまぶた、唇を切り落とす。