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どこにも行かないのに(どこにも行かないから)イヤリングを耳からぶら下げてみたりもする。銀色の金具は黄色くくすんだ肌には合わないとされているけれど、鏡の中を伺うにそんなに悪くないような気がした。2千円近く出して補充した初対面の下地がうまく馴染まなくて落ち込む。割とその程度。

意識して体のことを思い出す。肩の裏側と腰の両端はいつだって同時に存在しているということ、思い出さないと忘れてしまう。忘れたままでも生活に支障はないのだけれど、もう使うこともないかもしれない何かを今更得ようとしているだけだ。亡霊を追う。反対向きの電車に乗れば海に着くなんてまるで作り話のようだった。フィクションみたいな、が第一印象だった。この町に川はないから、何もかもが風だけを待っている。花は光ったりしない。

どこであろうと演劇は成立する、そんなこと百も承知の上で、劇場に行きたいと思ってしまう。上演のために作られたあの特殊な空間を懐かしく思う、その懐かしさを寂しく思う。大学で演劇をしていた場所は、なんというか劇場というよりも廃墟だったけれど、それでいて何もかもが上演のためのあれこれで埋め尽くされる本番1週間前。

キャリアセンターの人に電話した。これからの話をした。カウンセリングの時間を1時間勘違いしていて逃した。家族に聞かれないように外に出て、せっかく飲み物もベンチも確保して、つないでみたら繋がらなくてそのまま気づいて呆然。と思ったら犬が寄ってきて、足元を周り、ベンチに登り、膝に乗ってばっくりと大きな口を開けて笑っていた。連れていた方に曰く、本当の飼い主と年が近いのだとかなんだとか、餌や芸までもらってしまって、それでも犬の関心は別のところへ吹いて飛ぶ。挨拶もしないで逃げるように立ち去る。