0817

スーツを着る。小さい傘で日陰を作ってその下を歩く。電車に揺られて一度足を運んだことのあるところへ行く、暑い、暑い。話をする、話しきれなかった気がする、終わってからひどく不安になる。道が暑い。懐かしい歌を口ずさむ。(歌え、ウィニー

また電車に乗る。乗り換える。地下を走る電車の中でもこんなに電波が通じてしまうのは一体いつからこんなに電波が通じてしまうのは一体。少し時間があるのでチェーンの喫茶店に入る。冷風が当たる席に着いてしまって、少し前まで茹だっていたはずの全身は一気に寒気へと引きずり込まれてジャケットを羽織る。不思議や不思議。受付をする、エレベーターで少し高いところへ連れていかれる。こちらでお待ちくださいと通された小さな会議室、窓からは大きな建物、煙る空、それからつるつると滑りおりていく車体が見えた。迷いなく通り過ぎていくあれが本当は自分の体よりもはるかに大きくて重たい鉄の塊であることが嘘みたいに思えた。いくつもいくつも私の体が下敷きになる。都合のいい妄想だから、痛みも何もなくてただあっさりと潰れて弾け飛ぶ。わざと音の立つように呼吸をしてみる。鈍く響く。プラスチック板越しに話す、聞こえる声量なのかわからない。駅まで歩く数分間、面倒なのでジャケットも着たままで歩くと、少しぎょっとした視線に出会うような気がする。そのまま歩く。

 

車両が地上に出て、明るさの種類が変わる。窓の外を見ると、雨を迷っているような空模様だった。覚めると覚える。語源、心当たりも忘れてしまった。忘れることのほうが覚めるに近い気がする。覚めるって案外しゃきっとしてないのかもしれない。じわじわと夜が明けていくような、あるいはその反対のような。舌は光る。