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逃げる、なるべく遠いところへ逃げる、朝がきて重力がものすごい勢いで動き始めても、なるべく長い間空中を感じていられるように、たどり着いてしまわないように。走る、なるべく遠くを目指して走る、街明かりに背を向ける、くらい山並みに背を向ける、静かな海の香りからも、平穏な住宅街の屋根屋根からも背を向けてまっすぐ走る。捕まらないように、なるべくたくさんの時間を稼げるように、一心に走る、遠くまで、息が切れても走る、心を置いて、体がなくなっても走るのかもしれない、ずっと遠くまで行けた気がするとき、近づく明るさに怯えなくて良いような気持ちになれる。

一ヶ月半越しの約束で待ち合わせ、晴れの日、少し緊張して会う顔、白い煙、焼き増しではなく続いていること、続き方には色々あること、もう少し言葉が近くに行けるはずとたくさん思って、日が暮れて頭のふわつき、降りる駅を間違えたり。