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夢の中で、友達が自殺した。ふたり。目が覚めてみればどちらも実在しない人間だったけれど、新幹線に乗って帰らないといけないと思っていた。ロッカーには飲みかけのペットボトルを残して、私は消灯された橙色の廊下を歩いていた。小学校のような場所を駆けていた。小学校の体育館と同じ入り口をした劇場を夢に見たのは二度目だった。その友達の片方は、好きな劇団で衣装製作を担当している人、のようだった。起きてみればそんな友達はいなかったし、そんな劇団もなかった。もうひとりのことはもう忘れてしまって、夢の全体をもうほとんど忘れかけている。

バスを選んでバスに乗って、渋谷へ。人のそれぞれが人であることを覚えてしまえば気が狂いそうになるほどの人が、ずっと歩いている、色々な主張があり、漂う悲壮以外に本当のことはなさそうだったけれど、とするならば、ある種の芝居とそれの違いはなんだろう。送られてきたメールの文面を追いながら道を進む。人が、人がたくさんいる。芝居を見たのだった、渋谷の、屋上で、工事の声を聞きながら。主張や感覚、そこにある感情や体験は普遍的であるからこそ思考のフックになりえて、特別人に勧めようとは思わないものだったけれど得るものはあった、できればもう少し照明の力を借りてほしかったなどと思いながら、いる場所よりずっと高いビル群に囲まれた屋上で、人が叫んでいるのを見るのは面白い。ユーフォーを呼ぶ適当な儀式とか、その下を流れていた川とか。たまに夢の中で死んだ存在しない友達のことを思い出していた。少しずつ日は暮れて、終わる頃には真っ暗になっている。真っ暗の中、人混みと煌々と煌々と照り続ける建物の中を逆戻りする。去年の今なら意味を持たなかったであろう装飾がたとえば気になるようなこと。世界がのっぺりと剥がれていくような感じがした。バスを選んでバスに乗って、冬に向かいつつある渋谷に背を向ける。あれかしなんて見つかるはずがなかった、探してもいなかった。