0608

地面を這い回る木の根、花がひかっている子どもがひかっている 紫陽花の色はまだ潤いでよかった、水色の歩道橋を白い帽子の女の子が渡っていく 真っ赤なランドセル 肘にぶつかった女の人の焦る声、ホームに鳴り響くブザーを背にして違う電車へ向かうことがどうしようもなく悲しかったこと

ぼんやりするために出かけたようなものだった いつか近いうちに終わる、電車が行き来するのを眺めては嬉しくそれを許容されている トンネルからまるで脱皮をするように現れる、日が沈めば私もこの紙細工のまちの一部になる

空気の色を言い当てようと躍起になる、怪しい青と黄色、つまりはきっと緑なのだと思う せっかく座ったのに必死で窓を覗く、青が深くなります 緑であることは至極真っ当なことだと思われます 勧めてくれた本を読むのは好意の表明でもあり(あなたを覚えておきたいということなのかもしれなかった) 青緑色の夜に一帯は沈んでいき、すぐに紺色になるから全部を許せた(お前が許される側のくせにな) 気を抜けば足が止まってしまいそうな帰路に、真面目に服を着たからブランコにも乗れませんでしたが紫陽花は綺麗です