0821

朝には柔らかくて軽いパンを食べる。同じコップにコーヒーと牛乳を両方入れるのにはちょっとした悪意めいたものがある、ような気がする。何かの真似ばかりをしていた。真似をしている間だけは間違えないでいられた、忘れてしまっていた。正午を待たずに暑い季節は夏を名乗らぬまま駆け抜けていく、遠慮なく冷房を入れる。借りてきた本をくるくると読み回す、集中力が続かない、読み回す、くるくる、回って飽きてまた文字には戻ってくるちっとも読めないくせに。

サンドイッチだったらいいな、つめこむ卵の弾力を空想する。昔飼っていた金魚は共食いをしたらしい。骨だけになった魚の姿を、結局一度も自分の目で見ることはなかった。母が砂遊び用のお椀で公園に運んで、埋めてくれた。生ぬるく湿った浴室でお風呂の栓を抜く。薄青く、ごぽりと泡が、瞼には届かない。笛の音が聞こえるのをめくれば聞こえないもののことを思っている、細かい水泡が生き延びるみたいに、昼間の蝉は慎ましくふるえる。

「何で知ってるのその歌」「何で知ってるの」

廊下から聞こえる。わたしは部屋の隅で全身を探ってそれらしい言葉を掘り当てようとしている。ずっとそうしている。息苦しさやら遣る瀬無さやら、半ば八つ当たりじみた心地をどうすり替える事もできないで、乏しい語彙の中から死にたいの四文字をつまみだす、安易に用いる。