0907

水のかたまりが落下する音に耳を打たれて目を覚ました。バケツをひっくり返したような、とすぐに浮かんで悔しかった。強い雨と風、それからまばゆいほどの晴れ間がまだらに繰り返されて、まっさらな音ばかりが聞こえていた。たまに大通りのエンジン音が混ざる。

鎖骨のあたりを寝違えたのか、腕を開くと変な痛みがあった。痛みのありかを探しながら恐る恐る動かしたり触ったりしてみると手応えがあったりなかったりして不安になる。

専門家にかかるにしても我が身に起こるあれこれを言葉の形で示し当てるのは自分の頭でなければならず、言葉も体もどうしてこんなに漠然としているのだろうと、その漠然さを愛好していたところでやはり途方もない気持ちになる。

ある歌人の名前が思い出せない。有名で、名前を見ればああそうだったとなんでもなく納得することはわかりきっているのに、手がかりのひとつさえ思い出すことができない。