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種、それは鉛のように生き物として、肺のあたりに重たく沈んでいる。すくすくと育ち、肋骨のあたりに絡みつくのを抱えこむこともせず、あらがうこともせず、ただされるがままになって椅子の上でそれが行き過ぎるのを待つ。どうにかしようとも思えず、呆然として、ただ小さな種の中にわたしのもつあらゆるすべてが吸い込まれていくのを想像する。どこにも行けなくていい、だんだんと小さくなって、そのままどこまでも圧縮された果てに何もかもが静止することを想像する、願うほどの気力もない。なかったことになってほしいと思う。気遣いも罵倒も忘却もいらなくて、ただなかったことになりたかった。すくすくと育って体の表面を覆い尽くしていくのに突然すべてが止まってしまう生き物、あなたにわたしを取って代わられても構わないと思う。すべてが停滞している。時の流れに追いつけないことはすなわち、失敗とみなされる。それは後ろめたさに変換されて、新しい種になる。きっといつか育つ。

部屋は停滞している。質量が保たれている。1日の半分を寝て過ごし、寝て過ごす時間のうちの半分をごまかして、文字すら読めない時間を過ごして、ここでは何も起こらない。苦しまなくて済むのなら、何も起こらなくてよかった。窓の外では見えない形で時間が動いていて、人が生まれたり死んだりしていて、誰かが勝ち誇っているすぐ横で誰かが傷ついていて、それらとわたしとの間には一切の関係がない。日が暮れるまでに一度は窓を開けないと酸欠になる。